福祉用具貸与と特定福祉用具販売の違い

福祉用具のきほん / 2026-08-22 公開 / 2026-08-27 更新 / 約2,500字

同じ介護保険の福祉用具でも、借りる制度と買う制度は別のしくみで動いています。使える金額の枠も、申請の仕方も、途中でやめたくなったときの扱いも違います。どちらの制度で手に入れるものなのかを先に確かめておくと、費用の見通しが立てやすくなります。

費用の数え方が根本から違う

借りるほうは、毎月の利用料が他の介護サービスと同じ枠のなかで数えられます。要介護度ごとに決まった区分支給限度基準額があり、訪問介護もデイサービスも福祉用具も、すべてこの一つの枠を分け合う形です。

買うほうはこの枠の外にあります。同じ年度のうち10万円まで、という独立した枠が用意されていて、月々のサービスをどれだけ使っていても影響を受けません。 この違いは、限度額いっぱいまでサービスを使っている人にとっては大きな意味を持ちます。

ただし買うほうの枠は年度で区切られ、繰り越しができません。使わなかった分が翌年度に足されることはなく、4月1日にまた10万円分の枠が立ち上がります。

お金の払い方も違う

借りる場合は、はじめから1割などの自己負担分だけを事業所に払います。手続きは事業所と市町村のあいだで済むため、利用者が申請書を出す場面はほとんどありません。

買う場合は、いったん全額を払ってから、あとで9割分などを返してもらう償還払いが原則です。10万円の用具なら、まず10万円を払い、申請してから数か月後に9万円が振り込まれる形になります。この立て替えが負担になる場合に備えて、多くの市町村が受領委任払いという仕組みを用意しています。ただし使えるのは、その市町村に登録を出している事業所から買ったときだけです。 借りるときは最初から自己負担分だけなので、この違いは出ません。

借りる(福祉用具貸与)買う(特定福祉用具販売)
最初に払う額自己負担分だけ原則としていったん全額
申請事業所が代行し、利用者の手続きはほぼない領収書と申請書を市町村へ出す
返金までの期間なし申請からおよそ1〜3か月
受領委任払い該当しない市町村が用意していれば自己負担分だけで済む
ケアプラン必ず位置づける必ず位置づける

体の状態が変わったときの立ち直りやすさが違う

借りているものは、合わなくなれば交換できます。歩けるようになって歩行器が要らなくなれば返せますし、逆に弱ってきて車いすが要るようになれば入れ替えられます。月の途中でやめても、その月の扱いは事業所と市町村の取り決めに沿って整理されます。

買ったものは手元に残ります。合わなくなっても保険の枠を使って買い直すことは難しく、同じ品目をもう一度買う場合は、なぜ前のものでは足りないのかの説明が求められます。だからこそ、買う品目ほど試してから決める意味があります。

この違いがあるので、どちらでも手に入る品目については、体の状態が動いている時期は借りる、落ち着いている時期は買うという選び方が理にかなっています。

手入れと責任の持ち方が違う

借りているもののお手入れと点検は、事業所の仕事として決められています。定期的に訪問して不具合を見つけ、必要なら部品を替えます。壊れたときの修理も原則として事業所が持ちます。

買ったものは自分の持ち物です。故障したときの修理はメーカー保証の範囲を超えれば自己負担になりますし、処分するときも自分で手配します。ポータブルトイレのように、捨てるときに粗大ごみの扱いになるものもあります。

肌に触れるかどうかで分けている

買うことになっている品目には、共通する性格があります。入浴や排泄に使い、肌に直接触れるものです。

使い回しに向かないものを、貸与から外している。衛生の問題が、線を引く理由になっています。 便座、シャワーいす、つり具。どれも人の体に直接当たります。

逆に言えば、貸与のものは使い回されています。 消毒と点検が事業所に義務づけられているのはそのためです。どう消毒しているかは、聞けば教えてもらえます。

買ったあとに合わなくなったとき

買ったものは、体が変わっても交換されません。買い替えるには、もう一度お金がかかります。

購入費の支給には年度ごとの枠があります。同じ年度に買い直すと、枠を二重に使うことになります。 状態が動きそうな時期の購入は、慎重に決めてください。

高さや角度を変えられる製品を選んでおくと、多少の変化には付いていけます。 買うときに、調整の幅があるかどうかを見てください。

同じ品目でも、扱いが分かれることがある

2024年4月から、一部の品目は借りるか買うかを選べるようになりました。同じ名前の品目でも、型によって扱いが違うことがあります。

選べる対象になっているのは、一部の品目のうちさらにその一部です。手元の商品がどちらなのかは、事業所に確かめないと分かりません。

選べる場合は、専門職が判断の材料を出すことになっています。 出されないまま「買ってください」と言われたら、その場で決めずに聞き直してください。

申請の順番を間違えない

購入費の支給を受けるには、指定を受けた事業所から買う必要があります。 通信販売や量販店で先に買ってしまうと、支給の対象になりません。

申請の窓口は市区町村です。いったん全額を払ってからあとで戻る形と、最初から一部だけ払う形があります。 どちらになるかは市区町村によって違います。

買う前に、ケアマネジャーか福祉用具専門相談員に順番を確かめてください。 ここを飛ばして損をする人がいちばん多いところです。

借りていたものを、そのまま買い取ることはできますか。

介護保険の枠では買い取れません。貸与用の商品は消毒して次の人に回すことを前提にしているためです。事業所によっては保険を使わない自費での買い取りに応じることがありますが、その場合は特定福祉用具販売の10万円の枠は使えません。

販売のほうの10万円は、1品目につき10万円ですか。

いいえ、品目をまたいだ合計で10万円です。入浴用いすとポータブルトイレを両方買えば、その合計額が枠から引かれます。

出典

制度の運用と自己負担の額は市区町村によって異なります。 最終的な確認は担当のケアマネジャーか市区町村の窓口へお願いします。

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