福祉用具とは何か、介護保険で借りられるものと買えるもの

福祉用具のきほん / 2026-08-22 公開 / 2026-08-27 更新 / 約3,700字

福祉用具という言葉は広く、日用品の延長のようなものから、体を持ち上げる機械までを含みます。介護保険が面倒を見てくれるのはそのうちの一部で、しかも「借りるもの」と「買うもの」が品目ごとに決められています。ここを取り違えると、全額自己負担で買ってしまったあとに「それは借りられたのに」と言われることになります。

介護保険が想定しているのは、暮らしを取り戻すための道具

介護保険法では、福祉用具を「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び機能訓練のための用具」と説明しています。長い言い回しですが、要するにできなくなった動作を、道具の力で自分でできる状態に戻すためのものという考え方です。

この考え方は、費用が認められるかどうかの判断にそのまま効いてきます。介助する人の手間を減らすためだけの道具は対象になりにくく、使う本人の動作が変わるかどうかが問われます。ベッドから起き上がれない人が介護ベッドを使えば自分で起き上がれるようになる、というつながりが説明できることが大切です。

同じ品物でも、誰がどう使うかによって保険の対象になったりならなかったりします。 手すりを例にすると、床に置くだけの据置型は借りるもの、壁にねじで留めるものは住宅改修という別の枠組みになります。物ではなく、使い方と取り付け方で分かれるのが介護保険の福祉用具の特徴です。

借りる13品目と、買う6品目に分かれている

介護保険で扱う福祉用具は、福祉用具貸与の13品目と特定福祉用具販売の6品目に分かれます。合わせて19品目で、これ以外のものは介護保険では扱いません。品目の名前は政令と告示で決まっていて、事業所が勝手に増やすことはできません。

分け方の考え方はわかりやすく、肌に直に触れるものや、使い回しに向かないものが「買う」側にまとめられています。ポータブルトイレ、入浴用のいす、リフトのつり具などがそれにあたります。逆に、消毒して次の人が使える車いすや介護ベッドは借りる側です。

福祉用具貸与(借りる)特定福祉用具販売(買う)
品目の数13品目6品目
代表的なもの車いす、介護ベッド、手すり、歩行器ポータブルトイレ、入浴用いす、簡易浴槽
費用の枠区分支給限度基準額のなかに含まれる同じ年度で10万円まで
体に合わなくなったら交換や返却ができる買い替えは原則として自己負担
扱える事業所指定福祉用具貸与事業所指定特定福祉用具販売事業所

どちらの事業所も都道府県や市町村の指定を受けています。指定を受けていない店で買ったものは、たとえ同じ商品でも保険の対象になりません。ここは領収書を出したあとで気づくことが多いので、買う前に確かめてください。

2024年4月から、一部の品目は借りるか買うかを選べる

2024年4月の制度改正で、比較的安く、長く使うことが見込まれる品目について、借りるか買うかを利用者が選べるしくみが始まりました。対象になるのは固定用スロープ、歩行車を除く歩行器、松葉づえを除く単点杖、多点杖です。

選べるようになったぶん、決める材料が要ります。短い期間で体の状態が変わりそうなら借りる、当分このまま使いそうなら買う、というのが基本の考え方です。判断は一人で抱えず、福祉用具専門相談員とケアマネジャーの説明を聞いてから決めます。

費用は原則1割、ただし借りるものと買うもので枠が違う

借りる場合の費用は、その月に使った他の介護サービスと合わせて、要介護度ごとの区分支給限度基準額のなかで計算されます。限度額を超えた分は全額が自己負担になるため、訪問介護やデイサービスをたくさん使っている人ほど、福祉用具の分が枠を押し出さないかを見る必要があります。

買う場合の枠は別立てで、同じ年度のうち10万円までと決まっています。4月1日から翌年3月31日までを1年として数えるので、3月に買うか4月まで待つかで使える枠が変わることがあります。

自己負担の割合は所得によって1割・2割・3割に分かれます。介護保険負担割合証に書かれているので、手元の証書で確かめてください。

頼む相手は、福祉用具貸与事業所とケアマネジャー

実際に用具を届けて調整するのは、指定を受けた福祉用具貸与事業所です。この事業所には福祉用具専門相談員を置くことが義務づけられていて、体に合わせた調整や、使い方の説明、その後の点検までを担当します。

ただし、いきなり事業所に電話する前に、担当のケアマネジャーへ相談してください。福祉用具はケアプランに位置づけられて初めて保険の対象になるためです。まだ介護保険の認定を受けていない段階なら、住んでいる地域の地域包括支援センターが最初の窓口になります。

「介護用品」と「福祉用具」は同じものを指していない

店の棚や通販の分類で使われる「介護用品」は、おむつ、使い捨て手袋、とろみ剤、口の中を拭くものまでを含みます。このうち介護保険が扱うのは、19品目に入っているものだけです。 同じ売り場に並んでいても、制度の上では別のものとして数えられています。

「福祉機器」はもっと広い言葉で、義足や、声を出せない人のための機械まで入ります。介護保険の話をしているのか、障害福祉の話をしているのかで、指しているものが変わります。どの言葉で話が進んでいるかを、一度確かめておくと行き違いが減ります。

探すときにも効いてきます。「介護用品」で調べると通販の品物が並び、「福祉用具」で調べると制度と事業所の話が出てきます。借りたいのか、買いたいのかで、打つ言葉を変えたほうが早く着きます。

介護保険の外にも、福祉用具はある

介護保険が扱う品目は決まっています。そこに入っていないものは、暮らしに要らない道具という意味ではありません。 湯たんぽ、滑り止めのマット、握りやすい食器。どれも体を助けます。

保険の対象かどうかで、要る要らないを決めない。 対象なら安く手に入る、というだけの話です。対象外のものは自分で用意することになりますが、市区町村が独自に助成している例もあります。

お住まいの市区町村で何が受けられるかは、地域包括支援センターで聞けます。 介護保険と別のしくみなので、ケアマネジャーが把握していないこともあります。

決めるのは、使う人のほう

事業所は複数の商品を示すことになっています。その中から選ぶのは本人と家族です。 勧められたものをそのまま受け取る必要はありません。

合わないと感じたら、使ってからでも替えられます。 借りているものなら交換の道があり、費用の追加もかかりません。我慢して使い続けることに、制度上の理由はありません。

判断の材料は専門職が出しますが、どこで困っているかを知っているのは本人です。 段差でつまずくのか、立ち上がりが辛いのか。言葉にすると、示される商品が変わります。

用具が増えるほど、家は狭くなる

福祉用具は場所を取ります。ベッドを入れれば部屋の半分が埋まり、車いすを置けば廊下が通れなくなります。 一つ増やすたびに、動ける場所が減ります。

通り道をふさぐ道具は、それ自体がつまずく物になります。廊下と玄関は、家の中で転倒がいちばん多い場所です。 置き場所は、入れる前に決めておいてください。

使わなくなったものは、そのつど返す。 借りているものは返せば料金も止まります。減らす提案をしてくれる事業所は、信用できる事業所です。

どこから手をつけるか

全部をそろえる必要はありません。いちばん危ない動作から手を当てるのが順序です。夜のトイレ、浴槽のまたぎ、玄関の上がりかまち。

転んで骨を折ると、そこから寝たきりに向かうことがあります。一つの転倒が、その後の暮らしを決めてしまう。 だから、転びやすい場所が先になります。

このサイトの市区町村ページから、地域の福祉用具貸与の事業所を探せます。 どこから手をつけるかも、来てもらって家を見てもらうと決めやすくなります。

介護保険の認定を受けていなくても借りられますか。

介護保険としては借りられません。要支援か要介護の認定を受けていることが前提になります。認定を待っているあいだに必要になった場合は、事業所の自費レンタルを使い、認定が下りたあとで切り替える方法があります。切り替えの扱いは事業所によって違うので、申し込むときに確かめてください。

同じ品目を2台借りることはできますか。

必要な理由が説明できれば認められることがあります。たとえば1階と2階で生活していて、それぞれに手すりが要るような場合です。ただし判断は市町村ごとに違うので、ケアマネジャーを通して事前に確かめる形になります。

家族が使うために借りることはできますか。

できません。介護保険の福祉用具は認定を受けた本人が使うためのものです。介助する家族の腰を守るための道具であっても、本人の動作が変わるという説明ができるかどうかで判断されます。

出典

制度の運用と自己負担の額は市区町村によって異なります。 最終的な確認は担当のケアマネジャーか市区町村の窓口へお願いします。

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