福祉用具は買うより借りるほうが向いている理由
介護保険で扱う福祉用具の多くが「買う」ではなく「借りる」形になっているのには理由があります。値段の問題だけではなく、体の状態が変わっていくことを前提にした設計です。ただし何でも借りたほうがよいわけではないので、借りる意味が薄れる場面も合わせて見ておきます。
体は思ったより早く変わる
退院してきたばかりの時期と、3か月後では、できることがかなり変わります。歩行器で歩いていた人が杖で歩けるようになることもあれば、逆に車いすが要るようになることもあります。この変化に合わせて道具を取り替えられることが、借りることのいちばんの価値です。
買ってしまうと、合わなくなった道具が家に残ります。合わないまま使い続けると、姿勢が崩れたり、かえって転びやすくなったりします。使わなくなった車いすが玄関に置きっぱなしになっている家は珍しくありません。
借りているものなら、合わなくなった時点で交換の相談ができます。 交換にあたって新しく買い直す費用はかからず、月々の利用料が変わるだけです。
月々の負担が小さく、始めやすい
介護ベッドを買えば十数万円から数十万円かかりますが、借りれば1割負担でおよそ月800円から1,500円ほどです。実際の額は商品と地域と事業所によって変わりますが、始めるときのまとまった出費が要らない点は共通しています。
この差は、迷っている段階でも試せることにつながります。買うとなれば「本当に要るのか」を長く考え込むことになりますが、借りるなら1か月使ってみて要らなければ返せます。必要になってから届くまでの時間が短いのも、この気軽さのおかげです。
手入れと点検、壊れたときの手当てが付いてくる
借りている用具の点検と修理は事業所の仕事です。ベッドのモーターが動かなくなれば連絡すれば直しに来ますし、車いすのタイヤの空気が抜けていれば入れてくれます。この保守が利用料に含まれているのは、買った場合との大きな違いです。
介護ベッドや電動車いすは、使い方を誤ると重い事故につながる機械でもあります。専門の目が定期的に入ることには、費用面とは別の意味があります。
処分に困らない
介護ベッドを処分するには、分解して運び出し、粗大ごみとして出す手配が要ります。自治体によっては引き取れないと言われることもあり、専門の業者に頼めば数万円かかります。
借りていれば、要らなくなった日に連絡すれば引き取りに来ます。介護が終わったあとの片付けは家族にとって重い作業なので、この差は費用以上に効いてきます。
それでも買ったほうがよい場面はある
長く同じ状態が続くことがはっきりしていて、かつ値段が安い品目なら、買ったほうが合計額は小さくなります。2024年から選択制になった固定用スロープや杖は、まさにこの考え方で選べるようになりました。
また、肌に直に触れる入浴用のいすやポータブルトイレは、そもそも借りるという選び方がありません。制度が「買うもの」と決めている品目については、迷う余地がないと考えてください。
使ってみないと分からないことが多い
売り場で見て良さそうだった道具が、家では使えないことがあります。部屋の広さ、床の材質、家族の動き方。 条件は家ごとに違います。
借りていれば、合わなかったときに替えられます。買ってしまうと、そこで止まります。 判断を間違えたときの戻りやすさが、いちばんの違いです。
試してから決められる、というのは制度の上の利点ではなく、暮らしの上の利点です。 デモ機を貸してくれる事業所もあります。
途中でやめられる
体が良くなって要らなくなったら、返せば料金は止まります。続ける義務はありません。
入院したとき、施設に入ったとき、亡くなったとき。暮らしが変わればすぐに止められます。 買ったものは、そのときも家に残ります。
返すときの手続きは事業所が進めます。 連絡から引き取りまでの日数は事業所によるので、契約のときに聞いておいてください。
家に残らない
介護が終わったあと、使わなくなった道具の処分が残ります。介護ベッドも車いすも、粗大ごみとして出すのに費用がかかります。
自治体によって扱いが違い、運び出しを自分でしなければならない場合があります。 重いものほど、この負担が重くなります。
借りていたものは、事業所が引き取ります。 介護が終わったあとに残る仕事が一つ減るのは、思っているより大きな差です。
総額は、使う期間で決まる
借りると毎月かかり、買うと最初にかかります。何か月使うかで、どちらが軽いかが変わります。
介護保険で借りるなら、負担は原則一割から三割です。買う場合の負担も同じ割合ですが、枠の使い方が違います。 貸与は限度額の枠、購入は年度ごとの別枠です。
限度額を使い切りそうなときは、買うほうが総額で軽くなる場合があります。 ケアマネジャーに、両方を並べて計算してもらってください。
何年も借り続けると、買ったほうが安かったことになりませんか。
品目によります。値段の高い介護ベッドや電動車いすは、数年借り続けても購入額に届かないことが多く、保守が付くぶん借りたほうが有利です。数千円の杖のような品目は、1年ほどで買ったほうが安くなります。選択制の対象になっているのは、まさにこの後者です。
借りている用具に傷をつけてしまったら弁償になりますか。
通常の使用でついた傷や消耗は、利用料に含まれる範囲として扱われるのが一般的です。落として折るなど明らかに壊した場合の扱いは事業所ごとに違うので、契約書の該当箇所を確かめておいてください。
出典
- 厚生労働省 介護保険制度における福祉用具貸与・販売の概要(PDF) 2026-08-22 確認
- テクノエイド協会 福祉用具貸与価格適正化推進事業(厚生労働省) 2026-08-22 確認
- 内閣府 令和7年版高齢社会白書 第1章第2節 健康・福祉 2026-08-22 確認
制度の運用と自己負担の額は市区町村によって異なります。 最終的な確認は担当のケアマネジャーか市区町村の窓口へお願いします。
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